サラウンドからイマーシブサラウンド・VRへ
サラウンドというとホームシアターを思い浮かべる方も多いと思いますが、ほとんどの映画館、プラネタリウムや大規模エンターテイメント施設などで使用されている音響技術で気づかない間に触れていて実は巷にありふれているものです。
さらにヨーロッパからの伝統で多数のスピーカーにより表現されるマルチチャンネルの音楽もあり、ホールにおいても楽器の空間配置による空間音楽作品も演奏されることがあります。多方向の音響という考え方…分割されたアンサンブルにより演奏される音楽は西洋音楽において300年以上も前にヴェネチア楽派の向き合った聖歌隊を交互に歌わせる「複合唱様式」があり、メインのオーケストラとは別に離れた場所で演奏する小規模のアンサンブル「バンダ」、3群に分けられたオーケストラ(グルッペン)、会場内に演奏者がランダムに配置される管弦楽曲(ノモスガンマ)と歴史上無数に存在しています。
一般視聴環境としては、
イマーシブサラウンドの登場、ヘッドフォンで視聴可能な22.2ch、11.1ch、9.1ch、5.1ch→HPL等のバイノーラル化の技術が実用化の段階に入っておりポータブルゲーム機やスマートフォンアプリ、PCのメディアプレーヤーへの実装が期待されています。
コンテンツとしては
映画のDVD、ブルーレイディスクはステレオとともにサラウンド(5.1ch、7.1ch、Dolby Atmos、DTS:X)で収録されているものがあり家庭用ゲームなどもサラウンドで収録されているものがあります。放送においても衛星放送、地上波デジタル放送で5.1chの番組もあります。音楽の録音においてもイマーシブサラウンドであるAuro-3Dや11.1ch・9.1chのサラウンド録音のハイレゾ配信、ブルーレイディスク、DVD、洋楽の名盤5.1chマスタリングなど多数あります。
ただ、現在サラウンドの為に作曲された音楽コンテンツだけが世界的に見て数少なくほとんど手付かずの状態で、非常に求められています。Auro-3D、22.2ch〜9.1chや8chアンビソニックのフォーマットや2chバイノーラル化できるHPLのフォーマットを使えばマルチチャンネルのライブやサウンドインスタレーションで制作されたものも記録に残すことができ、安価な9.1〜22.2chやアンビソニック対応のDAW、イマーシブサラウンド編集に耐えうるスペックのノートPC、手頃な価格のマルチチャンネルモニターコントローラー付きオーディオインターフェイス、小型モニタースピーカーなどの登場で個人の制作環境は整っていて制作気運は非常に高まっています。
(写真はザルツブルグにあるモーツァルトゆかりのザンクトペーター教会、五台のオルガンが取り囲むように配置されていた)